2017/07
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『畚担ぎの島』(嶋博美 詩集より)
                                  
ムクゲ


 嶋博美の散文が私は好きです。詩よりも散文の方が
より詩的と言ったら、嶋は気を悪くするかもしれませんが。

 以下は、嶋博美詩集『畚担ぎの島』より

   

    Ⅰ    畚担ぎの島     

 陽炎がゆらいでいる。ギンギンと燃え滾る八月が、固まりかけて
いた島の坂道、そのアスファルトを緩ませている。二十五年ぶりの
故郷の島。潮騒に抱かれ、青臭い白茅の草いきれの中に立つ不
思議な安堵感。あの栴檀の樹も野原もあの日のままに美しい。

 ここは、父と母が畚(もっこ)を担いで、ジャリ石を運んだ島の坂道。
日雇い労働者となって、幾百幾千回上ったか下ったか、その日の
暮らしを支えて来たか。島の坂道、毎年梅雨がやって来る度に、雨
に打たれ風に曝され、その度に岩ばかりになってしまった島の坂道。
酔って父が、泣いてぼくが、ため息をついた坂道。働き者の母の青
色吐息、その汗の染み込んでいる島の坂道。

 ムクゲの母さんデベソ、と風が謗る。さくらの母さんでべそ、とやり
かえして、泣いて泣いて声が嗄れるほど泣いて、とうとう、取っ組み
合いまでやってしまったのはぼくですよお母さん。たかが、風のたわ
ごととさくらの母さん笑ったけれど、ぼくにはどうしても聞き流すことが
出来なかった。ムクゲの由来を知りはじめたその頃。

 それにしてもどうしてぼくは、あれ程までに怯えていたのだろう。
まるで狐に憑かれた様に、他人の言葉、、他人の視線を意識しなが
ら、身を固くして歩いた島の坂道。

 父さんを待って、母さんを待って、気が遠くなるくらいふたりを待って、
とっぷりと日の暮れてしまった島の坂道。いのり、うたい、かけた。
振り返り、立ち止まり、おののいた。うっそうと檪の茂る雑木林の続く
道。はねる落ち葉、はじける靴音に耳をそば立て、髪を逆立て、こころ
ふるわせながらひとり辿った家路。

 陽炎がゆらいでいる。ギンギンに燃え滾る八月が、固まりきれなか
った島の坂道、そのアスファルトを緩ませている。

 あれは、作りばなしだったのだろうか。狐が人を化かすと熱っぽく語
ってくれた島の年寄りのはなし。村はずれの古い栴檀の樹に、母子狐
の住みついていたと言ったあのはなし。

 二十五年ぶりの故郷の島は、目をみはるほど若返って、畚を担ぐ父
と母の姿はもうどこにもなかった。ぼくはちょっぴりほっとした。そして、
とめどなく涙が溢れた。



 * この作品は、作者が1990年代に故郷の島を訪れた折の思いが
   描かれています。(茶目太)

 *ムクゲ(韓国の国花) 下の写真はクリックすると拡大できます。

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