2017/07
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教材は、『ちいさん』のブログです(1)
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 前回4回続きでご報告した二年生の授業。実は、並行して行
った1年の授業を紹介したいと思ったのがそもそもの始まりで
した。

 このブログでも良くご紹介しているのでご存知の方も多いで
しょう。『きらきらいぬ日和』(ちいさん)のブログを訪問した
前日に たまたま1年の国語では教科書(教育出版・『国語表
現Ⅰ 改訂版』)から小川洋子「人間の哀しさ」という文章を
題材に、少し道徳的でもある授業をしました。

 ちいさんのブログの内容に関連性を感じて、二月十日の一年
の授業は、ちいさんのブログをそのまま使わせていただき、私
の思いをたくさん伝えてから、生徒には私が2年の教室にワー
プしている間に作文を書いて貰いました。

 それでは、まず前日の授業の教材です。教科書から写したも
のです。ご覧ください。



    人間の哀しさ        小川洋子

 以前、団地に住んでいた頃、毎年春になると自転車に乗って
筍を売りにくるおじいさんがいた。郵便局のわきのガードレー
ルにもたれてしゃがみ、広げた新聞紙に二十本かそこらの筍を
並べていた。いかにも今朝掘ってきたばかりという感じで、ま
だ土が残り、形もふぞろいだった。
頭の小さな痩せたおじいさんだった。スピーカーで呼び込み
をするわけでもなく、のぼりを立てるでもなく、ただ黙って座
っているだけだった。
 何度か私も筍を買った。たぶん、ありがとうございますと言
っているのだろうが、口がもそもそするだけでうまく聞き取れ
なかった。それでも、新聞紙にくるんでくれる震える手の表情
で、感謝されているのが分かった。
 ある日、おじいさんが包帯だらけになっていた。両手、両肘、
おでこ、足首、あちこちにけがをしていた。しかしどう見ても、
お医者さんに治療してもらった様子ではなく、自分で適当に包
帯を巻き付けたようだった。頭には血がにじんだままだったし
、包帯はどれも古びていた。
 自転車で転んだのだろうか。おじいさんはいつものように、
筍の前でじっとしていた。
 今日は買おうか止めようか、考えていたら急に子供の頃を思
い出した。昔やはり自転車に乗った、野菜売りのおじいさんが
いた。その人は筍だけではなく、いろいろな野菜を荷台に積ん
で、各家を回っていた。母も時々買っていたようだ。
 その日は小雨が降っていて、私は玄関の隣の部屋から、窓の
外を眺めていた。商売のすんだおじいさんは、家の前に止めた
自転車に乗ろうとしていた。ところが片足が言うことを聞かず、
なかなかまたがることができなかった。
 自転車に乗る時はいつもそうなのか、たまたま雨のせいで調
子が狂ったのか、分からない。不自由な方の足を両手で持ち上
げようとするのだが、すぐバランスを崩してしまう。自転車は
ぐらぐらし、売れ残った野菜は雨に濡れ、足は頼りなくだらん
としている。しまいにおじいさんは、「乗れん」とつぶやいて、
自分をあざけるように弱々しく笑った。
 小学校の五年か六年だったはずだ。私は夜、その光景を繰り
返し思い浮かべて泣いた。泣くことが一番ふさわしいわけでは
ないと分かっていたが、他に気持ちを表現する方法を知らなか
った。 
 単純にかわいそうに思ったからではない。手助けすべきだっ
たのにと後悔したわけでもない。もっと根源的な感情を揺さぶ
られた気がした。当時の私にとって初めての経験だった。
 もしかしたら、”あはれ”という言葉が本来持っていた意味
に近いのかもしれない。はかなく、哀しい様子を目の当たりに
し、深く心に染みいり、いとおしく思う。そんな感じだろうか。
でもいくら言葉を継ぎ足しても、足りない気がする。
 あれはおじいさん個人に対する感情とは違っていた。彼の片
足を覗き穴にして、私は人間の存在そのものの哀しさに触れた。
人間のか弱さを見てしまった。そしてつまりは、自分が抱えて
いるみすぼらしい部分に気付いてしまったのだ。
 おじいさんはどうにか自転車にまたがり、よろよろしながら
遠ざかっていった。私はいつまでも窓の外から視線を動かせな
かった。母は娘が何を考えているのか気付きもしないで、買っ
た野菜を冷蔵庫にしまっていた。
 自分が今日目にしたものは何だったのか、当時は見当もつか
なかった。わけも分からずただ泣くしかなかった。やがて私は
小説を書くようになった。涙の代わりをしてくれる表現の方法
を、ようやく見つけた。
 書くことに迷いを感じる時、野菜売りのおじいさんを思い浮
かべる。自分にとっての小説の意味が、あの日に隠されている
ような気がするからだ。
 結局、私は筍を買った。おじいさんの包帯はゆるんで解けか
けていた。(『深き心の底』より)

 

 
 いかがですか。ブログで紹介できるほどの長くもない文章で
すが、多くの大切なことを凝縮して感じさせてくれます。



 では続きは次回に







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